夫婦でソウル
2010.7.20-22
上海の次はソウル

 前の週に上海へ行き、今週はソウル。これも初めて行く街なのだが、今回は珍しく夫婦で行く旅となる。上海よりもさらに近くて、関空から2時間以内。韓流ブームで、ソウルに何度も行っている日本の女性も多いはずだから、私のような初心者は、遅まきながら田舎者が見物に行くような態度で、欲張らず、おごらず、ちょっと雰囲気を味わうだけの気楽な旅にしたいと思う。2泊3日だが、午前出発、夕方帰着の時間たっぷり自由旅行だ。

関空から

 一人旅の場合は、何でも気ままにいくのだが、二人旅となると、無駄のない行動の計画性が必要となる。特に暑いので、外に出る時間を極力短くしたい。荷物はキャリーケース1個にまとめた。
 阪急電車から直通の地下鉄天下茶屋経由、南海電車で関空へ。先週とは違うルートだ。とにかく外気に触れないように、乗り換えは1回のみ。
 空港でチェックインをして食事の後出発ゲートへ。ほとんど時間に余裕のない、旅慣れた人の時間設定でほどなく出発となった。窓から外の写真を撮る時間はあった。関空発15時15分。ソウルまでの所用時間は1時間50分。乗る飛行機は、ボーイング737、コンパクトな飛行機だ。


ソウルは金浦(ギンポ)空港

 飛行時間が短いし、食事の時間帯でもないから、この便では機内食が出ない。国際線で機内食が出ないのは、ヨーロッパの隣国間の便を除けば初体験かもしれない。飲み物はもらえるので、あまり喉は乾いていないが、ただならとプレミアムモルツをもらって飲んだ。機内で飲むビールは、よく効く。映画を選んで観る間もなく、あっという間に到着だ。
 ソウルと言えば仁川(インチョン)空港ではないのか、と思われるでしょうが、この便は金浦(ギンポ)空港行なのだ。古い空港だ。この空港は昔、乗り継ぎだけしたことがある。その時もそうだが、韓国は空港でカメラ撮影が禁止されている。北朝鮮ではない、韓国でもだ。駅などの交通機関の場所でも禁止だと本に書いてある。平和な雰囲気だが、「戦争中」の国だからなのだそうだ。
 金浦空港は、仁川空港よりも絶対に便利だ。市内へのアクセス時間は半分。アジアのハブ空港を見てみたかったという気持ちも少しあるが、今回は便利さでこちらの方が良かった。
 
 従って、韓国で撮った写真は少ない。駅や電車の写真が全然ない。どこまで守らなければいけない規則なのかよくわからないが、出来るだけ守るよう気をつけた。

まずは両替

 明日は早朝から出かけるので、きょう必要な分も含め、韓国ウォンをある程度用意しておかなければならない。両替は市内でした方がレートが良いことは知っていたが、時既に夕方の5時。安全を見込んで、空港で両替をする。4万円が50万ウォン余りのお金となり、札の厚みがある。財布に入れたら膨らんだ。それに単位が一気に大きくなり、大胆にお金を使ってもいいような気分になる。ここ2−3年で円は上がっているので、韓国の物価は安く感じる。大体の目安として、ウォンの金額からゼロを一つ取って、それに75%をかけると日本円の価値になる。1万ウォンは750円ぐらい。そういえば、1円が1以上の額に相当する通貨は、私には初めてだ。

バスか地下鉄か

 空港から市内のホテルまでは、バスか地下鉄か、あるいはタクシーか。この選択は、通常なら地下鉄を選ぶのだが、ちょっと考えてしまった。リムジンバスの停留所に、私たちの泊るホテル前というのがあるのだ。ソウルもやはり暑いので、空港からホテルのそばまでバスで行ってくれるのは、荷物のことも考えると魅力で、そういえば過去に妻とヨーロッパ旅行の時に、パリで地下鉄を降りてから暑い中を荷物を押してホテルの場所を探したのを教訓に、また、ロンドンでは地下鉄に乗ってる時間が長く、エアコンも効いていなくて気分が悪くなったことを思い出し、バスにする決断をした。
 結果的にこれは失敗だった。夕方5時以降のラッシュで道路はどこも渋滞。車内の座席は3列でゆったりだが、運転が荒いので酔ってくる。ホテルのチェックインを18時として予約していたので、それを過ぎるとキャンセルされる場合があるというのを気にして、車内からホテルへ電話をかけた。日本語が通じたので良かった。ここでも日本の携帯電話でそのままかけられることが実証された。

 バスは結局1時間半かかった(地下鉄なら50分ぐらい)。ホテルの方向を地図で確認し、歩道を歩き、横断歩道の信号待ちをするとき、街の人々の雰囲気が感じ取れる。ここで驚く。海外旅行で初めてのことだ。聞こえる会話は韓国の言葉ばかりだが、もし言葉が聴こえなかったら、若い人々の顔、姿、行動、どう考えても日本の街と同じだ。日本の街でも外国語は聴かれるので、つまり、ここは、日本の街とよく似ている。今までに経験した香港・北京・上海のどこよりも日本に近い街なのだ。

ホテルは東大門の近く

 個人旅行だからホテルは事前にネットで予約した。東横インにするか、その他にするか、判断に迷うところであった。見知らぬ街のホテルを予約するのは、経験上、東横インのような一定の品質が見込める所にすれば安心だから。しかし、利用者の書き込みを参考にして、値段の割に設備も場所も良いホテルにした。一流ホテルではない。
 バス停がホテル前の名称だったが、実は本当に玄関前に着くのではなく、歩いて5分ぐらいかかった。途中、庶民が利用する安そうな食事処がたくさんあり、ホテルに荷物を置いたらここらで夕食だと思った。

ホテルはGOOD

 チェックインは日本語で通した。外国のホテルでこんなの初めてだ。部屋の窓から夜景とソウルタワーが見える。部屋は広く、大きな冷蔵庫、キッチン、テレビはデジタルの大画面。ケーブルテレビの無数のチャンネルの中には、韓国ドラマも、NHK総合テレビも、何でも見られる。電気の変圧器もあって、万全だ。

庶民の夕食

 食事に外へ出る。この辺りは繁華街。渋谷みたいな若者の街。食事の店は韓国風の安いのが多く、色々見て回る。二人とも焼き肉はあまり食べたいと思わない。妻は、こういうときには、客がたくさん入っている店で、若い客層の店が無難だとアイデアをだす。必ずしもその通りではないが、決めて入った店でいざ注文となる。写真入りのメニューがうれしい。日本語も少し通じる。石焼ビビンバとサムゲタンを一つずつ、それにビールと炭酸飲料。注文を終えると直ぐに、ニラを切って油をまぶしたようなのと、キムチを持ってきてくれた。勘定は全部で2千円ぐらいだったが、二人で十分満腹になるボリュームだった。

 関空発15時15分、それから4時間後にはこうして夕食を食べ終えるという余裕のスケジュール。その4時間のうちの1時間半を費やしたバスだけが時間の浪費だった。

コンビニ探し

 ホテルに帰る前にコンビニを探す。牛乳やヨーグルト、明日の朝食のパンなどを買う。一般的に、コンビニの店は小さく、品ぞろえは良くない。清潔感もない。ホテルにも朝食レストランはあるが、部屋で食べたほうが朝の時間が効率的なので、1回分の食べ物は買い込んでおく。

韓国ドラマ

 テレビをつけると、色んなドラマをやってる。チャングムを放送したMBCにチャンネルを合わせると、よく似た時代物のドラマだ。翌日きいたのだが、これが今人気のドラマだそうだ。言葉はわからないが二人でテレビに見入ってしまう。字幕はないのかと思っても、ここは韓国なのだ、日本語の字幕があるはずが無い。韓国のドラマは日本でも放送されているから、韓国ドラマには字幕があるような気がしたり。

2日目、チャングムの世界へ

 日本出発の前日に、ネットで「チャングムの誓いツァー」を予約していた。ソウル市郊外にある撮影セットのテーマパークへ行くツァーだ。電車・バスを乗り継いで行く方法もあり、その方が安くて自由がきくのだが、移動時間の効率を考え、ツァーにした。
 朝食後、7:40にホテルのロビーにいたら迎えに来てくれる。5分前ぐらいに部屋を出て、フロントで待つ間、きょうの夜のショー「ナンタ」の予約方法を聞いた。今の時間はまだ予約できないのでツァーから戻ってきてから相談することにした。しかしこの相談は不要となり、あとでツァーのガイドさんが手配して取ってくれたのだ。

 時間通りに、元気のいい女性のガイドさんがホテルの玄関から私の名前を呼んで入ってきた。待たせていたタクシーに私たちも一緒に乗り込み、集合場所になるホテル・レックスへ移動。途中でそのガイドさんは下車して別の客をピックアップしに行く。我々は降りたところでタクシー代を払い、領収証を貰う。2100ウォンだった。タクシー代は安い。150円ぐらい。そのお金はあとでガイドさんからもらった。
 半日のツァーで、料金は一人72000ウォン(5400円)。これは高いというべきか安いのか、公共交通機関を使うよりは高いが、日本語で色んな事をガイドしてくれるからいい。きょうのツァーの参加者は14名。マイクロバスが最後の客をピックアップしたのは8時半。行きのバスの車中ではガイドさんがしゃべり続ける。参考になるいい話だった。韓国の新たな知識、イメージが生まれる。ガイドのチョンさんは、小学生の子供がいる女性で、昔やっていたこの仕事に最近復帰したのだそうだ。(これは、バスに乗る前、ホテルのトイレで一緒になった妻が聞いた身の上話) 

 「チャングムの誓い」は私もNHKで見ていた。東京の単身赴任中だった。妻も自宅で見ていたので、このドラマに関しては共通の話題となる。テーマパークは、MBC放送のスタジオの敷地のそばにあり、ドラマの撮影をした場所だ。実際の王宮の規模ではないから、そこは割り切って見なければいけないが、何より、ドラマのシーンが思いだされる場所なので、とても楽しい。

 ソウルの郊外は、車で30分もすれば緑が多い。一般道ばかり走るが、韓国には高速道路はないのか? 天気は曇っていたが蒸し暑い。パークに着くと、ガイドさんが30分ぐらい説明して回り、あとで自由に写真を撮るようにと言われた。衣装を着て記念撮影をするのが人気で、私たちはしなかったが(美しい衣装に見合う顔の自信が無い)、ほとんどの人たちがそちらに行っていた。私たちはグッズや食べ物の売店で色々買いながら冷房で体を休めた。

 今回の旅行のメインが、このテーマパークだったかもしれない。これはドラマのセットで、本物の王宮跡は市内にあるから、明日見に行くことにする。

明洞(ミョンドン)へ

 帰りは全員が、ソウル一の繁華街、明洞で下車した。ガイドさんが道中、電話で「ナンタ」のチケットを手配してくれて、バスを降りてから、客の昼食の好みに応じて店を教えたり、最後に私たちのチケットを買いに劇場まで一緒に行ってくれた。これで今夜のエンタテイメントの予定までバッチリ。

 明洞は歩行者天国。ちょうど明洞のセールの開幕セレモニー・ライブのようなことが行われていた。ガイドさんに、サムゲタンと石焼ビビンバ以外のものを教えてもらった店の一つが「明洞餃子」。行列は長いが大きい店なので回転が早い。そこで麺類と餃子を食べる。餃子といっても形は小籠包。チャングムにも出てきた饅頭(マンドゥ)である。とても美味しい。キムチとご飯がおまけで付いてくる。キムチはいくらでもおかわりを配ってくれる。味は我々の味覚にぴったりで、ボリュームもある。客は日本人が多いのかと思いきや、やはり地元の人でいっぱいで、一人で食べに来ている客も多い。さっきまでライブの撮影をしていたテレビクルーの人たちも食べていた。実はこの店で翌日も食べることになる。


ドーナッツ

 このドーナツは日本でも食べられる。但し、日本ではずいぶん並ばないと買えないらしいとガイドさんが言っていて、お薦めを受け、食後の休憩に行ったのが「クリスピー・クリーム・ドーナツ」。ここで買って日本に持ち帰る人もいるんだとか。なぜかここは行列も無く、座る席も空いている。
 これが人気のドーナツか。私たちは初めて食べた味に納得する。実はここも、翌日昼食後にまた来たのである。


Nソウルタワー

 ソウルの街の小高い山の上に立つNソウルタワー。やはり高い所に登らないわけにはいかない。明洞から歩いて、上り坂を進み、エスカレーターやロープウェイを乗り継いでタワーの上へ。街は霞んで見える。


新世界デパート

 別にどこでも良いのだが、食料品を買って一旦ホテルへ帰ろうと、タワーを降りて行った所にある新世界デパートへ。デパ地下の感じは日本と同じ。ただ、最近の日本では1階にスゥイーツ等の売り場がある所もあり、ここはまだそうではない。何でも日本に追随する韓国の様子がデパートの売り場からもわかる。パン屋さんで大きいのをスライスしてもらい、明日の朝食用にする。ヨーグルトや果物、お土産用の韓国海苔(これは、試食して一番高いのを購入)、色々買ったら荷物でいっぱいになり、地下鉄の最短コースでホテルへ。

 地下鉄の切符を買う券売機で、初めての切符購入だ。プリペイドカードもあるようだが、今回は電車に乗る回数も少ないだろうから、一回ごとに買うことにする。タッチパネルで目的の駅名を探すのだが、ハングルでは全く分からない。英語で書いてあるのも、細かくて分かりにくい。漢字の表記は無い。ガイドブックを出して路線地図を見ながらやろうとすると、横から若い女性の係りの人が来て、丁寧に教えてくれた。切符は一枚ごとのICカードで、使用後にデポジット千ウォンの払い戻しがある。ここも日本のような使い捨ての切符はない。回収されて再利用となる。


NANTA劇場
 ホテルから再度、夜のショーを観るために出陣。明洞は昼間と変わり、出店が出ている。食べ物や衣類など。雰囲気が変わる。日本のテレビで韓国のことがニュースになる時に出てくる明洞の人通りに浸かる。
 ナンタのことを知ったのは、実は直前にネットで情報を調べてのことだった。そんな有名なショーが、韓国では毎日いくつかの劇場で上演されているというから、見逃すわけにはいかない。ガイドさんも絶賛していた。8時から1時間半のショー。リズム、音楽、コミカルなキッチンを舞台にしたもので、こんなの文章で説明するわけにはいかない。体で感じるしかない。客は日本人をはじめ外国人も多い。
 世界各地での公演も行っていて、日本にも来たようだが、今回の機会に見られてラッキーだった。


最終日

 2泊3日の最終日、飛行機は18:10発だから、まだきょう一日たっぷりと時間がある。
 ゆっくり起きて朝食をとり、チェックアウトして荷物を預け、地下鉄で昌徳宮(チャンドックン)へ。外を歩くのは暑いので、ゆっくりと歩く。

 昌徳宮は本物の王宮跡だが、そんなに感動はない。暑いからエアコンの効いた休憩所でたっぷり時間を過ごす。

 ソウル市庁前へ行き、ワールドカップサッカーの試合中継を何万人もが応援した広場を見ておく。


 明洞まで地下街を歩いて行き、そこでまた昼食となる。豆乳の冷麺は、かなり濃い。栄養満点だ。麺類の汁は全部飲むのをモットーとしている私だが、さすがにこれはきつかった。


帰宅は9時半

 いきなり帰宅の時間の話になるが、夕方の18時10分ソウル発関空行に乗り、大阪の自宅に着いたのは21時30分。近いものだ。これなら東京から帰ってくるのとあまり変わらない。ソウルへの旅行ってのは、海外旅行ではないみたいに手軽なものなのだ。円高のおかげで使うお金も少なく済む。海外旅行独特の、日本との違いを見つける楽しみとストレスは、あまり多くない。何度も韓国へ旅行する人の気持ちが少しわかってくる。目的があるのだ。何かをしたいという目的を持てば、いい旅になる。今回の旅は、あまり疲れないように、雰囲気を味わう旅として、目的は果たせたのかなと思う。そして、最も近い国なのに、今まで自分の目で見たことが無かったので、とても勉強になった。

                         .