上海見聞録
2010.7.11-15
初めての上海

 中国旅行といえば、北京と香港が経験済なのだが、これは中国のほんの一部。特に発展著しい大都市、上海を見ておかないわけにはいかないと、今回のリフレッシュ休暇を利用して行くことにした。
 今回も、旅は楽しむよりも見て学び、驚きを逃さず記憶してくるものとして、5日間のハードな日程を組み、一人旅となった。

 ここには、はるかに日本をしのぐものもあれば、マナー、クオリティの低さに驚く面もある。だからこそ、旅行記をしっかりと書いておくことが必要で、別途こつこつと書こうとしている旅行記だが、そのダイジェスト版として、このサイトに「上海見聞録」を載せる。上海に行ったことのある方は懐かしく思い出すために、未経験の方には、イメージをふくらます一助に、まずい文章をご勘弁の上お読みいただければ嬉しい。

上海は近い

 関空から、行きは2時間半、帰りは2時間10分。大阪から北海道ぐらいの距離だ。天候、気温は大阪とほぼ同じ。梅雨末期のあまり良くない日本の天気と同じ状態で、気温も同じぐらい。時差は1時間。姉妹都市大阪と同じような環境下にあるのが上海なのだ。今週の天気予報も、大阪と同じように、雨のマークが続いている。

 事前に旅行ガイドブックを買って情報収集し、大まかな計画を建てる。2002年に行った北京とは同じ国でもだいぶ違うようだ。もちろん8年の間に中国全体が発展しているので、もはや8年前の北京と比較するのは無意味だ。

JALで飛ぶ

 7月11日(日)朝7時過ぎに家を出る。4年ぶりに海外へのフライトなので、自宅から関空へ行く電車の道のりが懐かしい。今回はJRの大阪駅から快速で行く。
 10時25分発のJAL、上海行き。飛行時間は正味2時間。
 機内食は普通に出されて、ちょうど昼食になる。機内の客は日本人が多い。

上海到着

 着きました、上海です。入国手続きをして、荷物、税関、両替。上海では必須の公共交通カードを、リニアモーターカーの切符売り場で購入。リニアもそれを使って乗ることにする。あとで考えても、地下鉄の券売機にいちいち並んで(並んでるとは言い難い状況もある)買うのは大変な負荷になるから、このカードに100元(1400円相当)をチャージして、これでほぼ5日間、地下鉄をフル活用できる。一人なので行動は速い。

 日本との時差は1時間。私の電波時計の針は日本の時間を示したままだから、デジタル表示の枠の中に世界の主要都市の時刻を選んで表示させるしかない。時間には気をつけよう。時間が決められていること(飛行機や劇場など)で1時間間違うとダメになることがあるから。

 外は雨だ。5日間のほとんどが雨で、小さな折りたたみ傘が活躍する場面が多かった。写真を撮ったり、ガイドブックの地図を片手に歩くには、傘が邪魔で仕方ない。従って、頻繁に傘を開いたり畳んでリュックに仕舞ったり、手間のかかる天候の5日間となる。

リニアモーターカー

 浦東(プードン)国際空港から市内へ向かうにはバスや地下鉄もあるが、世界最速のリニアに一度乗ってみることは外せない。当日の航空券を見せれば2割引だが、公共交通カードを使えば2割引と窓口に掲示してあった。それで40元だから550円ぐらい。日本の感覚では安い。改札を入る前に手荷物のX線検査がある。改札はカードをかざし、回転バーを押して入る方式。センサーではないので、荷物は先にバーの下をくぐらせて通せばよい。上海の地下鉄はすべてこの方式。今は万博のため地下鉄の全駅に荷物検査の機械が設置されていて、地下鉄の改札に入る前には荷物検査だ。
 リニアの列車は、新幹線みたいなものだが、車内の座席が質素で、けっして綺麗とは言えないカバーで覆われている。横6列の自由席。乗客はそんなにいない。もうひとつ残念なことが、後でわかったのだが、世界最高速度の時速430キロでの運転は、時間帯で限定されていて、私の乗った列車は300キロまでだったのだ。雨だから速度を抑えてるのかと自分で解釈して、帰りの時は雨ではないのに300キロだったから探求して判明したのだ。ガイドブックにも書いていなかった。
 所用時間は7分。発車して加速し、300キロになったと思ったらもう減速が始まり、まさにあっという間の到着。

地下鉄


 着いたところは龍陽路という駅で、そこから地下鉄でホテルのある東安路には7号線一本で行ける。上海の地下鉄は歴史が浅いが世界一の路線網。最初に1号線が開通したのが20年前で、今や営業距離の総延長は世界一なのだそうだ。電車も駅も新しい。車両の座席は、固いツルツルの椅子で、掃除がしやすく清潔感はあるが、長時間は尻が痛くなる。車内放送は中国語と英語だからよくわかる。ホームの表示も、次の駅が書いてあるのでわかる。列車の時刻表はどこにも無いが頻繁に来るので気にはならない。よくぞここまで地下鉄を作ったなと感心する。私の持っている旅行ガイドブックは最新の情報を反映しているが、少し更新が古い1年前のガイドブックは、路線図が使いものにならない。上海の旅行ガイドブックを買う時には留意しなければならない。どんどん地図が変わっていくからだ。

 8年前の北京の地下鉄は、紙の切符を人の手で改札していたから、ここはまるで違う国のようだ。

 東安路駅のB番出口へエスカレーターで上ると、若い警官が2人お立ち台の上に立っている。ものものしい。でもただ立っているだけだ。すると、上官が来て、2人のうちの一人からお金を受け取って、道路向いの食堂の店へ行った。これが当たり前の習慣のような感じだった。

ホテルに到着

 私が泊るホテルは、楽天のホームページで予約した安いホテル。しかし一応の設備やサービスは揃っているし、交通の便も良い。万博の影響か、高騰が続く上海のホテル料金の中では、お買い得だった。1泊朝食付約4千円。
 駅から10分ぐらい、雨の中を傘をさし、ゴロゴロと荷物を引っ張って、事前に読んでいたクチコミ情報のとおりに歩いたら無事到着。14時頃。フロントでは英語と一部日本語で会話ができ、チェックイン完了。3階の部屋に入る。一人で行く海外旅行ではいつも、最も安堵する瞬間だ。

最初の用事

 雨だし、5日間の初日だから、頑張って観光することもないのだが、できればこれだけはと思って出かけた。上海ならではの雑技を見ようと思う。チケットの購入、あるいは場合によっては今日でも良い。いくつかの劇場で毎日公演があるようだが、ガイドブックで的を絞って、「雲峰劇院」に行ってみることにする。静安寺駅下車。地図が頼りで、傘をさして歩きながら探すのだが、おおよそ、駅からの方角がわからない。だぶんこっちだと決めてしばらく進むと、とんでもない日航ホテルが現れて、地図の範囲外に来てしまったようだ。この雨では、地図をゆっくり確認することもままならないので、日航ホテルのロビーに入り、ソファでじっくり地図を見ていたら、ホテルのドアボーイが来て「チェックインですか」と。いや違います、と英語で返答したら、「休憩ですね」と英語で言われた。ま、そういうことだ。

 わからなくなったら元に戻るのがいい。地図を頭に入れて、出直し、その後2度、ビルの軒下で地図を確認しながら、ようやく雲峰劇院のチケットオフィスにたどりついた。
 窓口ではなく事務所のようなところに女性が一人いて、きょうはショーが無いと言われた。明日ならあるという。明日の夜は所用があるし、明後日は万博へ行くし、あきらめて他の劇場にしようかと考え一旦出た。そこでもう一度考え直し、最終日前夜の14日ならいいかと思い、14日のチケットを購入した。200元(約2800円)。その女性はとても親切に座席図で私の席を教え、もう一段高い席に近い良い席をくれた。

 さて、今日の用事は終わったので、あとは何をしてもいい。まずは手近な静安寺に入ってみる。都会の中の大きな寺だ。雨は降り続く。金色に統一された建物、大仏など、見ごたえはあるが、何しろ雨で、ゆっくり写真を撮ることもできない。


 静安寺の周辺はデパート、オフィスビル、ホテルのある繁華街。日系のデパート「久光」があり、そこの地下食品売り場を歩いていたら一角にあった「北極星」で、きょうの夕食とする。大阪のオムライスの店だ。メニューはオムライスに何かついてくるもので、味はだいたい日本の北極星そのままだ。注文の際に飲み物を聞かれる。そうだ、水がタダで出てくることはないので、何か飲み物は必要だ。ビールは飲まないのでマンゴジュースを注文する。
 後日談だが、上海へ来て日本系の食事の店に入る場合、北極星のように、日本の味をそのまま守って出しているところと、中国の人の舌に合わせた味付けで出すところがあり、結果的にここは正解だったが、日本式ラーメンの店はたくさんあるも多くがまずいのだそうだ。

 少し歩いてから、駅の近くのマクドナルドに入り、夕食の追加に、ハンバーガーとコーラ。ここで中国のマナーを垣間見た。マクドなら言葉がわからなくても大丈夫と思ったが、カウンターの前で少し遠慮気味に前の人が済むのを待っていたら、次々と割り込んできて、2人が私よりも先に注文した。これだ。中国では並ばないのだ。万博を機に、行列に並ぶこと、車のクラクションを鳴らさないこと、洗濯物を外に干さないことなどが呼びかけられ、従来よりは大分変化したそうだが、でも、自然にそういう習性は出るものだ。
 それから、マクドなどの店で食べ終わった後、自分で片付ける習慣がない。そういうシステムなのかもしれない。北京でもそうだった。上海で、自分で片付ける仕組を見たのは、日本系の「ミスタードーナツ」ぐらい。ただ、そこでも食べ終えたまま店を出る人が半数だった。
 従ってマクドでは、食べ終えたらそのままでいいのだが、どうも気持ちが落ち着かないので、私は調理場の店員に持って行って渡した。若い男の店員は怪訝な表情だった。

テレビと電話

 
 ホテルに帰り、部屋にいる間はテレビをつけておく。日本の衛星放送が映るホテルが多いと聞くが、このホテルでは映らない。従って上海のテレビ放送を見るのだが、言葉は全然わからないので、たまにニュースみたいのがあれば映像だけ見る。天気予報は雲のマークに水滴のようなのが付いてるので、明日は曇り一時雨ぐらいか。予想気温と思われる「25−30」というのが見えるが、そんな幅のある予想ならどうでもよいような気がする。
 日本のニュースが入らないので、きょうの参議院選挙の開票結果も知らない。それを知るのは帰国してからとなる。

 日本への電話連絡はというと、ずいぶん進歩したもので、携帯電話をそのまま持っていれば、日本からかけられた電話は普通に通じるし、こちらからも頭に+81をつけるだけで日本の電話に直接かかる。実質的に日本国内の旅行と変わらぬことになる。料金は余分にかかるので、そう頻繁にはかけない。4年前に香港に行ってた時もそうだった。香港にいたら突然仕事の電話がかかってきたことがある。今回は家族に無事を知らせるぐらいの用事だ。

電気のコンセント
 
 ガイドブックで事前に色々読んでいると、アダプターや変圧器が必要なのだが、ホテルで借りられる場合もあると書いてあった。私の場合、使う必要のある電気器具は、携帯電話の充電器とカメラの充電器。それぞれ240Vまでの電圧に対応しているので、あとはコンセントの形状だけの問題。意外にOKだった。色んな形状に対応する差し込み口になっていた。便利になったものだ。

 デジカメの内蔵時計が日本時間のままであることに気付いた。ここで時間修正。初日の分は日本時間で記録されていることになる。

2日目

 
 2日目の行動が始まる前に、深夜のホテルの部屋で、蚊に刺される事態が起きた。エアコンは停止して寝たところ、暑さとかゆさで目が覚めた。灯りをつけてみたが蚊は見つからない。我慢して眠るとしばらくしてまたもっと腕の数か所を刺されて目覚める。もう寝られない。フロントへ行って殺虫剤を貸してもらおうかとも思ったが、うまく意思が伝わるかどうかわからない。蚊は英語で何と言うのか考えたり、蚊という漢字は中国でも通じるのかと考えてるうちに、思いついた。ワールドカップサッカーの決勝戦を見ることだ。起きてエアコンの風を吹かせれば、蚊に刺されることもないだろう。
 オランダとスペインの試合を最後まで見て、あとはエアコンをつけたまま眠った。薬局で殺虫スプレーを買う自衛手段を考え、次の夜に備えることにした。

 朝になり、午前5時、日本時間では6時だ。朝食は午前7時からなのでまだ時間がある。ゆっくりシャワーを浴び、ガイドブックで行動計画を考えた。

 7時を少し過ぎた頃、1階のダイニングへ行った。料理を作ったりしているカウンターの女性が何か私に問いかけた。中国語なので全くわからない。宿泊者のリストを持ってきて私に見せた。私にはすぐに見つけられる。それでOKとなった。名前のチェックをしてるんだ。この件は、3日目ぐらいになってようやくわかったのだが、朝食の時に、部屋のキーカードと部屋bニ日付が書いてあるホルダーを見せる必要があったのだ。
 食事の内容は、まあこんなものだろう。パンの他にお粥や蒸しまん、スープ、小籠包、果物、、ヨーグルト、飲み物も色々あり、全部食べたら満腹になる。日本人客にも何人かここで遭遇した。

遠出か市内か
 
 2日目の行動は、新幹線に乗って遠出するか、それとも市内観光か、状況次第で判断することにしていた。但し、夜6時からは人に会う予定があるので時間の計算はしっかりしておかなくてはならない。

 上海駅まで地下鉄で行く。朝のラッシュ時間だから、地下鉄の車内もホームも乗換通路もかなりの混雑だ。上海駅から遠出をするとすれば、蘇州へ新幹線で行くことになる。人の波に圧倒されながら駅の券売機のところへ行き、タッチパネルで蘇州への列車を検索する。うまく出てこない。人のいる窓口を探すがよくわからない。フロアの隅の方にしゃがんでガイドブックを読んでいたら、その付近に座り込んで休憩している人たちを排除しようと年配のガードマンのような人が、ホイッスルをけたたましく鳴らして何か叫んだ。これはあきらめて市内観光にしたほうがいいのではないかという気持ちになり、あっさりと方針を固め、周囲の写真だけ撮って次の行動へ。


外灘(ワイタン)へ
 

 地下鉄に乗る時は必ずこの荷物検査がある。タワーの展望台や劇場、博物館などどこもこの手荷物検査で、市民生活が縛られている。

 地下鉄で南京東路へ。ショッピングなどの繁華街だ。雨が上がってきた。そこから歩いて川沿いの街並を見に行く。外灘という古い金融機関のビル群。そして対岸に見える浦東(プードン)のテレビ塔や高層ビル群。予想通りだが、雨に霞むこの辺りの景色は、奇麗に見えるはずがない。テレビ塔の上の部分と、最も高いビルの上海環球金融中心(日本の森ビル)は、雲の中にある。


 それにしても、人が多い。地方から観光に来ている人が多い。日本人も多いはずだが、ほとんど出くわさない。それほど人が多い。

豫園(ヨエン)
 
 上海観光で外せないスポットのひとつだから、豫園には行かなければならない。外灘から歩いて豫園へ。途中の道路で、こんなのを売っている。違法だと思われるが、警官に注意されたら一時的に撤去するか他へ移動する、よくある違法露店の一つ。

 豫園と豫園商城という繁華街は、伝統の雰囲気がマッチして、一体化している。池の中にある茶館がよく写真に出るが、そこは豫園の外にある言わば喫茶店だ。豫園に入場するには、並んでチケットを買う。珍しくきちんと行列になっている。その前に、豫園の近くにある小籠包の店には長い行列が。この行列のことは大阪のラジオ(おはパソ)でも聞いていたので、私も並ぶ気はあったが、もう少し後にしようと、まずは豫園に入る。ところで、豫園とは一体何か?と考えることもなく、古い建物と庭園だという知識だけで中を散策した。雨模様の天気で湿度も高いし、足元が滑りそうなジメジメした所という暗い印象が残った。



南京東路でラーメン
 

 結局昼の食事は南京東路まで地下鉄で行って、そこでガイドブックに載っている老舗のラーメンを食べた。チャーシューが別の皿にたっぷり盛られていて、これを汁に入れて食べた。実にうまかった。相席となったサラリーマン男性二人が、私のを見て同じものを注文していた。本では16元と書いてあるが22元(約300円)。ガイドブックの情報はどんどん古くなるのが今の上海なのだ。それでも300円なら安い。


公園を散歩
 
 地下鉄の人民広場駅は3つの線がある大きな駅だ。周辺には市役所にあたる「上海人民政府」や公園、博物館、ホールなどがある。人民公園を歩く。あまり整備されていない公園だ。集まってトランプをしているグループ、蚊でも出そうな日陰のベンチで寝ている人、どこの国の公園にもある光景とは違う光景が見られる。そのうち、また雨が降り出す。傘を開いたりたたんだり、カメラを首に下げたり仕舞ったりと、忙しい。


夕方の浦東(プードン)へ
 
 浦東は、上海の新しいビジネス街。今夜は会社の現地法人へ立ち寄って、会社の知人に会う。汗まみれの服をホテルで着替えて、地下鉄乗り継ぎで行く。タクシーでも数百円で行けるのだが、街を覚えるには電車・バスを利用するのがベストというのが私の方針である。
 行先は上海で最も高いビル「上海環球金融中心」。101階建のこのビルは日本の森ビル。夕方の雨が降ったりやんだりの天候の下では、ビルの頂上が雲の中に隠れる。
 1階の案内に行くと、2階のオフィス・レセプションへ行くように言われた。当たり前だがセキュリティがしっかりしているビルで、2階ではパスポートを見せるように言われた。インタナショナルに通用する証明書はパスポートしかないということか。カードをもらって無事にビルの中へ。
 会社のオフィスでは、久しぶりの対面やら日本語が通じる場所にほっとした後、ビル内の小籠包のおいしい店に連れて行ってもらった。
 午後8時過ぎ、一人になってホテルへ戻ろうかというとき、ビルを見上げ、写真を撮る。頂上は雲に隠れたり見えたりしている。
 
 そして、霧に霞んで見えるのがテレビ塔だ。観光名所が次々と目の前に現れる。テレビ塔の展望台に上がってみたが、こんな天候の時に良い景色が見えるはずがない。並ぶ時間ばかり浪費し、上ったという体験だけのテレビ塔だった。
 
 そして、ついに、くっきりと「上海環球金融中心」ビルが、上まで見えた。

 
終電が早い
 
 地下鉄の終電は22時頃だと本に書いてあったが、それは元々信用していない。万博開催中に、それはないだろう。しかし、それにしても、23時に近い時間になり、これはアウトかと気をもみながら駅に行き、この日については何とか乗り換えもできて、終電に滑り込んだ。(別の日には終電アウトでタクシーになる)

 ホテルに帰ると、のどの渇きを水で補い、日本から持ってきたサントリーの「黒烏龍茶」で体内を消毒する。黒烏龍茶は脂肪の吸収を抑えるのだが、油などが体に合わないとき、毒消しのような効果もあるということを何かで読んだので、今回大きいペットボトルで持ってきたのだ。原料は中国産だろうから逆輸入か。ユニクロの服や下着も来ているから、複雑。

3日目は上海万博
 
 上海と言えば今は万博であり、上海へ行くと人に話せば、だれもが万博に行くんだねと言う。しかし恥ずかしながら、私は5日間のうちの1日だけを万博見物に充てることに決めていた。天気はどうせ雨だし、迷いなくこの日は朝から万博会場へ。さすが、会場へ向かう地下鉄路線は朝のラッシュと相まって混雑が甚だしい。駅から外に出ると万国旗のポールや中国館が霞んで大きく見える。傘をさしてチケット売り場へ。すんなり買った後、入場のセキュリティ入口に並ぶ。雨の中、屋根のある所をジグザグに進む。
 きょう一日で、パビリオンに一つも入らなくてもかまわない。風景・建物・雰囲気などを見て写真に撮ることぐらいで十分。何時間も並んで入るのは御免だ。
 上海万博の入場者は、万博とは言え外国からの客がほとんどなくて、90数パーセントが中国人だそうだ。確かに、外国人の姿が見えない。

 午前中は強い雨だったが、小降りになった午後は、パビリオンの外観を見て歩き、会場内のバスやフェリーに乗り、夜はイルミネーションを撮影した。上の写真は全て電気自動車のバス。平気で横断する人たちを見ると、中国らしい。
 夜の景色が最も奇麗だ。



 万博のグッズは、公式のものでも安いので、少し買った。繁華街の路上や駅の通路などで模造品が売られているが、買ったことはないので価格は不明。さらに安いんだろう。

 人ごみと雨の上海万博見物はこれで終了。ホテル近くのコンビニで、青島(チンタオ)ビールを1本買い、ホテルで飲んだ。普段アルコールはほとんど飲まない私だが、このビールはアルコール度が低いライトビールで、私にはちょうど良い。
 
4日目雨が上がり、洗濯物干しの現場を発見
 
 万博で世界の客を迎えるマナーとして今年禁止されている洗濯物干しを、ホテルの近くの路上で見つけた。前日までは雨が降ったりやんだりだから見られなかったのだろう。この場所は、大きな並木道で歩道もある道路に面した、1階店舗、2階以上がマンション(というのかどうか)の建物。私が地下鉄駅とホテルを行き来する道の頭上である。こうするしか干す方法が無いのだろう。


世界一高い展望台へ
 
 上海環球金融中心は、ビルの高さでは世界第3位(1位:ドバイ、2位:台北にある)だが、展望台の場所の高さは世界一で、ギネスに認定されている。ようやく晴れたこの日は、そこに登ってみる。先日会社へ行った時と同じルートで行き、厳重なセキュリティを経て展望台へ。天気はまあ良いのだが、景色は霞んで見える。中国の景色はこんなもんだと北京で体験済なので、驚かない。中国の人が日本に観光に来て「空気がきれい」という感想を言い、青い空の写真を撮るのがよくわかる。


新天地から博物館
 
 「新天地」いう名前にはきっと意味がある。西洋風の新しい街で、各国料理のレストランが集まる街だ。ここで、どういうわけか、ドイツ料理の店で昼食となった。上海でドイツ料理か。
 この近くには中華人民共和国の建国にまつわる史跡もある。
 
 上海博物館へ歩く。歩くことに抵抗はないので、地図さえあれば歩く。
 上海博物館の入場セキュリティチェックで、手荷物のX線検査の際、ペットボトルの中身をチェックするために、ひとくち飲むように指示された。こういうやり方は初めてだ。
 上海博物館は、入場無料。その点は英国式。内容は、きっといいものもあるのだろうが、私にはわからない。一応一通り見て、出たらまた雨となった。

雑技鑑賞
 
 上海の雑技(サーカス)は、いくつかの劇場で毎日上演されているらしいが、私が見るのは初日にチケットを買った雲峰劇院のもの。昔子供の頃見たサーカスの原点のようなものが見られた。しかしそのレベルはかなり高い。意外なことに、写真撮影OKで、写真やビデオを撮っている人が多い。本当はOKじゃないのかもしれない。というのは、この国では社会のルールが守られないことが珍しくないので、人がしていることは必ずしも正しくないから。しかし私はカメラで演技の模様を撮影した。ただ、フラッシュ無しで撮るので、あまりうまく写らない。観客の中で目立つのは団体の外国人。バスで来ている。終演後にステージ上で記念撮影もしている。技はどれも見事なものである。劇場ごとに特色があるそうで、この劇場は古典的な出し物が中心。上演時間は、休憩なしで1時間半。終わったのは9時。


夜の外灘(ワイタン、バンドとも言う)へ
 
 劇場を出ると雨は降っていない。上海を立つ前夜だから、街を見るのもラストチャンス。夜の外灘へ行って川沿いの夜景を撮りたいと思い、地下鉄で南京東路へ向かった。駅から外灘への道は、ものすごい人で、歩道がまともに歩けない。川沿いのプロムナードも人であふれかえっている。
 私はカメラと三脚を駆使して、外灘のライトアップされた古い建物、対岸の夜景を撮った。



終電に遅れて、タクシー
 
 写真を撮るのもテキパキと時間を気にしながら手早くこなし、10時45分頃、地下鉄の駅へ急いだ。先ほどの人波は既に引いている。ちょっとのところで乗れなかった電車が、次の電車になり、静安寺での7号線への乗り換えがアウトとなった。こうなったらタクシーという手段があることは考えていたことであり、何の問題もないのだが、でも深夜のタクシーにはやや不安もある。
 静安寺の駅周辺は、知らなくはない場所だが、人通りも少ない夜の11時過ぎに地上へ出たところで、方角も何もわからない。何とか地図と照合して方角を定め、タクシーを止めた。あらかじめノートに書いてあるホテルの名前と場所を示すと、運転手は、ホテル名はわからないが、場所を示す交差点名で了解された。主な道路には名前が付いているから、交差点は二つの道路名の交わるところなので「宛平南路×零僚陵路」でわかる。あとはお任せとなった。メーターを下す。16元から始まる。深夜料金だ。上海の街は、東西南北の碁盤の目ではないので、道を曲がったりしてどっちの方角に走っているのか、ひょっとして遠回りで距離を稼いでいないのか、私にはわからない。ずいぶん時間がかかったような気がする。結果は26元(400円余り)、距離もレシートに出ていて5.1キロ。タクシーは安いというのが実感。
 交差点で降りて、近くのコンビニできょうも青島(チンタオ)ビールを1缶とスナック菓子を購入。きょうは先日と違って店内に客が多かった。


帰国の日
 
 5日目にして初めて晴れてきた。上海(浦東空港)発13:25の便だから、きょうは、ゆっくり起きて、どこも行かず帰るだけの予定。晴れてるとは言え、空が青いわけではない。これが中国の空なのだ。
 ホテルの窓から見える建物の窓から、ニョキニョキと洗濯もの干しの竿が出ている。
 
 チェックアウトをして、ドアボーイに「タクシー?」と聞かれたが断り、ゴロゴロを引いて地下鉄で空港へ向かった。いつもの道だが、道端で行商人が売っている物は、ハスの実とチェリーだった。ハスの実は料理の材料になるんだろうか。

 朝は地下鉄のこのあたりの路線も万博で混雑するが、10時にもなるとと空いている。交通カードの残高ではリニアに乗れないが、リニアだけ窓口で購入して、帰りもリニアで空港へ。交通カードは空港のリニアの窓口で払い戻した。よく役に立ったカードである。

クラクションの嵐
 
 実は初日から最後まで、最も違和感のあったことは、車のクラクションの嵐である。日本ではほとんど鳴らさないクラクション。ここでは、渋滞したり、前の車が減速しただけでも鳴らすので、とにかく道路ではいつもクラクションの音が聞こえる。これでも今年はマナー運動で良くなったほうだという話を聞いて、余計に驚く。
 ホテルから駅までの数分間、いつものように鳴り響くクラクションを聞きながら、名残を惜しんだ。

人民元ともサヨナラ
 
 空港で残った人民元を円に両替する。もうお金は使わない。
 高額紙幣である100元は1400円。1元札は14円ぐらいのものだから、お札の感覚がずいぶん日本と違う。1元の硬貨があるのは、当然でもあるが、まだまだ1元札が主流なのだ。札はこの他に5元、10元、50元もある。


 以上で初めての上海旅行は終了。やはり、海外旅行の中でも「疲れる」旅行の類に入る旅だった。人の多さと、マナー感覚の違い、それに今回は「暑さ」と雨。貴重な体験をいっぱいさせてくれた上海に感謝して、また日本の生活に励むとする。