最近思うこと(日記・エッセイ)
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2006年4月−6月
2006.6.26(月) 通勤帰りの音楽

 
私は、通勤の帰り道に音楽を聴くようにしている。USBから録音した多くの曲を、ただひたすら順番に聴くだけなのだが、きょう聴いた曲は、ちょっと面白い組合せになった。
 チャイコフスキー作曲「グランドソナタ」第1〜第4楽章。演奏は若手ピアニスト上原彩子。この人はチャイコフスキーが得意らしく、ピアノの演奏にも力強さがある。というと、音楽の専門家のようだが、素人が聴いててもそのように思えるから、本当にいい演奏なのだ。
 そして、次に出てきたのが美空ひばりの「川の流れのように」と「愛燦々」。この2曲だけが、わたしの持っているこういう類の曲だ。美空ひばりのファンでもなんでもない。ただ、この2曲はとても好きで、何度も繰り返し聴いている。次の曲が浜崎あゆみの「いつかのメリークリスマス」。これできょうは帰宅となった。


2006.6.11(日) 休日

 
昨日の土曜日、梅雨の中休みとなり、傘を持たずに出かけた。
 花を見たりして一日を過ごすことになるのかどうか、成り行き任せで行動してみた。

 まずは、向島百花園へ。電車で行くなら東武伊勢崎線の東向島駅だが、錦糸町からは乗り換えも伴うし、ここへ行くときによく使う手は、徒歩だ。約30分、三ツ目通りを北へ進む。

 向島百花園の目的はアジサイの「隅田の花火」。前の日にHPで六分咲きと把握していたので、やや不満足な咲き具合になるのは承知して行った。でも花にはその時その時の表情があり、その時点で精一杯の花を咲かせているのを私は素直に受け留めて写真に撮る。毎年この時期には来ているが、まだまだこれから咲く時期もいいもんだ。街を歩いていると、歩道の街路樹のたもとにアジサイが咲いているのをよく見かけるが、それが隅田の花火だったりすることもある。墨田区に多いかもしれない。
 向島百花園には年に何度か行くのだが、夏はいつも蚊に刺される。今回もやられた。

 次に堀切菖蒲園へ。ここへ行くのは初めてで、ちょっと楽しみだ。東向島駅から東武線に乗って2駅、堀切で降りて歩く。これは私のやりかたであって、一般の方には東武線「堀切」下車は勧められない。かなり歩くことになる。京成線の「堀切菖蒲園」という駅があるのだ。

 堀切菖蒲園は、入園無料。皇居東御苑の菖蒲園と比べ3倍ぐらいの面積に、ギッシリと植えられている花菖蒲が、いまちょうど見頃になっている。確かに美しい花菖蒲が沢山ある。種類も多い。しかし、私がいままで日本一と賞賛してきた皇居東御苑の菖蒲園と、どっちがいいか、考えながらの、妙な鑑賞となった。黄色い菖蒲もあって、黄色のそのものは特にきれいということではないが、他の花の背景に黄色がぼやっと写ると、とてもきれいに見える。つまり引き立て役になる。フジテレビのカメラが来て、インタビューをしていた。ハナショウブの記念切手を少し買った。

 京成の堀切菖蒲園駅から京成の上野行きに乗り、日暮里で下車した。ここでJRに乗り換えるのだが、私はちょっと駅の周辺を歩いてみたくなり、改札を出た。十数年前、名古屋にいた頃、東京で年間100泊ぐらいした定宿が日暮里のホテル・ラングウッドだった。懐かしんで見てみたい気になったのだ。
 駅の改札のすぐそばの2階にある喫茶店、ここは昔ながらの喫茶店でもありレストランでもある。特に美味しいものはない店だった。カレーライスとかスパゲティのようなものが中心。駅に近い喫茶店ということで便利ではあった。玄関を見たが全然変わっていない。ホテルラングウッドは相変わらずだ。そこから近いそば屋がどうなっているか、出来ればそこでそばを食べようと行ってみた。ここの立ち食いそばを朝食にしていたのが懐かしく思い出される。行ってみると、そば屋はあったが、すっかり別の立ち食いそば屋だ。ここには私の好きなイモ天は無かった。残念だが、そこのそばを食べて、日暮里から山手線で東京へ向かう。

 山手線と京浜東北線は並行しているので、どっちでも良いのだが、この時間帯の京浜東北線は快速運転で、日暮里には停車しない。上野か秋葉原で乗り換えれば、少し早く東京に着く。そこまでこまめに乗り換える人はいないと思うが、理屈の上ではそうなる。秋葉原で乗り換えた。

 東京駅から歩いて皇居東御苑へ。途中、和田倉門を通る。和田倉門は石垣だけが残っている門だが、そこにある和田倉噴水公園には、皇太子殿下(現・天皇陛下)御成婚記念噴水があるので、私は用がなくてもここを通り抜ける。そして大手門から皇居東御苑に入る。ここも年に何度も来る所。掲示を見て再認識したのだが、皇居東御苑は月曜日と金曜日が休園だそうだ。月・金に行くことはないとは思うが、人に薦めるときの参考に覚えておこう。

 HPで調べておいた。ハナショウブが見頃になるのは6月10日から15日、かなり短い期間だ。行ってみるとまだ咲き始めという感じではあるが、よく咲いている。これぐらいの時期がいいと思う。やはり日本一はこっちだと思った。天気が良かったので、ショウブの花にはかわいそうだが、陽の光を浴びた美しさもある。この時期に雨に濡れたショウブもいいものなのだが。写真を撮ると、花が立派なのと、池やサツキの花の背景がショウブの花を引き立たせる。私が自信を持ってお奨めする日本一美しい菖蒲園。今年のチャンスは、もうあと数日。来週の土日は下降線の花になる。入場は無料。アジサイは少しだけ咲いているがまだまだこれから。アジサイのあるのは、天守台跡の裏側。旧江戸城の跡だ。

 北桔橋(きたはねばし)門から出て、北の丸庭園、武道館を通り、田安門を出た。春の桜の時期には最高の桜が見られる千鳥ヶ淵の所だ。歩道橋を渡ると靖国神社の境内になる。

 ここで一度見てみたいと思っていた靖国神社「遊就館」に向かう。入館料ならぬ「拝観料」800円を払って入ったのが2時半頃。結果としてここを出たのが閉館の5時半。3時間もいることになろうとは予想しなかった。足腰が疲れた。ゼロ戦や人間魚雷「回天」などの現物が展示されている。そういうものだけかと思っていたのだが、膨大なパネル展示を見ていくと、歴史の勉強になる。全部をていねいに読んでいったら一日でも足りない。北京で見た「抗日戦争記念館」のような雰囲気だ。
 最も私の足取りを重くし、ちょうど足腰の疲れとあいまって動きが止まってしまったのは、戦没者の遺影が飾られているコーナーだ。家族に宛てた手紙もある。未婚のまま戦場に散った息子や弟のためにと贈られた花嫁人形が展示されているコーナーがあった。ここでひと際スペースを使って展示されていたのが、私の出身地北海道八雲町宮園町の佐藤ナミさん(現在は故人)が、昭和57年に靖国神社を参拝した際、昭和20年春に沖縄の戦争で亡くした当時23歳の息子に宛てて思いを綴った手紙と、息子に贈る「日本一美しい花嫁・桜子さん」の花嫁人形、そして親子の木彫り熊だった。八雲の人がこういうふうに展示されているのを観て、私は知らない人だが、懐かしく身近な思いをしたのと同時に、戦争を知らない者としての軽々しさを再認識した。

 遊就館の展示を3時間に渡って見たが、まだまだ時間不足だった。日本の戦争の歴史をもっと勉強しなければ、知らないことだらけの私には、いま靖国参拝問題について明確な意見を持つこともできない。日中両方の戦争記念館を見た私が言えることは、これから先には絶対に戦争をしてはならないということだ。

 重い足取りで、夕暮れの靖国神社にお参りをし、JRの市谷駅から総武線に乗り、秋葉原で床屋へ行ってから錦糸町へ戻った。

 野球のロッテ・巨人戦と、サッカーのイングランド、そしてチャングムの誓いを見て、色々あった休日一日を終えた。
 


2006.6.4(日) 2809枚+89枚

 
私のホームページに、何枚の写真が登載されているのか、きょう数えてみた。

 2809枚、うちYahooの写真アルバムを活用しているのが約半分の1497枚。
 写真とは別に、チケットコレクションに載せているチケットや記念切符など89枚。

 知らず知らずのうちに、随分たまったものだ。我ながら驚いている。そういえば最近では、昔よく作った写真のアルバムに縁がない。2800枚もの写真をアルバムに貼ったら、保管に困る大変なボリュームになる。まさしくペーパーレスの時代。


2006.6.4(日) クロアチアってどこにある?

 
クロアチアという国に行ったことのある人は少ないと思う。もちろん私も無い。ワールドカップ・サッカーの1次リーグ対戦国である。私はいつも手元に「TVのそばに一冊、ワールドアトラス」という地図帳を置いている。テレビや新聞のニュースを見るとき、それが世界のどのあたりにあるものなのかを知ると理解しやすいからだ。

 東欧の国・クロアチアは、実はイタリアのすぐ隣の国だった。イタリアにも行ったことが無い私には全く位置も知らなかった国だが、これならサッカーも盛んなように思える。人口450万人。

 オーストラリア、クロアチア、ブラジルの3試合に臨む日本は、決して甘くは無い。2試合勝つのが理想だが、最低1勝1分け1敗となるためにも、ぜひクロアチアには負けない試合をすることが必須だ。

 地図帳で見るジョグジャカルタは、Yogyakartaと書かれている。ヨグヤカルタと読む方が良いような気がする。
 宮里藍が出場中のアメリカ女子ゴルフツァー、今週はニュージャージー州の何とか言う聞いたことのない地名。ニューヨークの隣の州だから、たぶん東京から見たら伊豆か箱根あたりの場所なんだと思う。最終日を残して現在1位。今回はどうかな?

 ブラジルの位置は、日本からみた地球の裏側ということでよく知られている。しかし、南半球に行ったことがない私には、太陽が北にあることも、太陽のほうを向いて右から陽が上り左側に沈むことも、体が理解できない。国土が日本の23倍、人口1億5千万人の大きな国ブラジルが、サッカーに全てをかけているのだから勝ち目はない。しかし、そのブラジルが涼しいドイツで勘をつかめずに日本のサッカーに翻弄される試合も想像できなくはない。「ブラジルに勝つ」。アトランタの奇跡が、今回はワールドカップで再び起こる、ということも現実に無くはない。
 


2006.6.3(土) 花情報

 
東京でこれから見られる花の情報。というほど権威のある情報ではないが、私がこれまでに見てきて、やはり今年も見に行こうかと思っているスポットについての見頃予想です。

 皇居東御苑の花菖蒲。これは私がこれまでに見た花菖蒲園の中で最も美しい。東御苑のHPでは一部開花が始まったとのこと。来週の土日が見頃と私は読んでいる。地下鉄の大手町または竹橋下車、あるいはJR東京駅から。

 向島百花園の「すみだのはなび」はまだ咲いていないようだ。これも今の所来週の土日。紫陽花はご承知の通り色が変化していくので、咲いているときでもその時期によって色が違う。最もきれいだと思うのが、白から薄っすらと水色がかった色に変化したときだ。その時期にちょうど土日が当たるのはなかなか難しい。


2006.5.19(金) 人身事故

 
東京の電車が止まったり遅れたりするのは頻繁にあることで、その原因で最も多いのが「人身事故」のような気がする。それと「線路内に人が立ち入った」というもの。
 今夜8時半ごろ乗った山手線の車内ディスプレイで、なんと、「人身事故による遅れ」の表示が4路線。人それぞれに悩みがあるのはわからないでもないが、週末の夜に、こうして大勢の人に影響を及ぼすようなことは、なんとかやめてもらいたい。
 夜11時半ごろ乗った山手線では、「○○駅構内で人が線路に立ち入った」とかで電車が急停車した。さらには、秋葉原駅で総武線のホームへ行くと、人であふれかえり、深夜12時というのに、朝のラッシュをはるかに凌ぐ満員電車となった。雨は降る、蒸し暑い、不快な夜は、一層うっとおしい。


2006.5.13(土) チャングムの誓い

 
私が韓流ブームを知ることになったのは「冬のソナタ」をNHKで見てからだ。その韓国ドラマが、色々と放送され、今はついに、女優が主役の「チャングムの誓い」がロングラン。私も「チャングム」を毎週楽しみに見ている一人だ。DVDで見るほどでもなく、テレビ放送は地上波しか見られないから、最もポピュラーな視聴者なのだと思う。大阪の家では妻も毎週見ているそうだから、何か妙な共通感を覚える。果たしてこのドラマ、男性は見ているのだろうかと密かな疑問もある。男性同士でこれを話題にしたことは無い。
 なぜか毎週楽しみになるほど面白いドラマだ。頑張れ、チャングム! という気持ちで見る。女の戦いの構図は冬ソナでも天国の階段でも同じ。鬼のような敵役が面白い。

 明日は、さいたまスーパーアリーナで、フィギュアスケートの団体戦のような競技会がある。アイスショーに緊張感を付けて採点方式で行うようなものかとは思うが、団体戦となると、頑張れニッポンということになる。私は見に行かないが、夜8時から、東京12チャンネルで放送がある。


2006.4.22(土) 昭和記念公園の Tulip Garden Museum

 
今年も昭和記念公園のチューリップの季節が来た。行くならこの日しかない、きょうのタイミングを計り、特別な早朝開園の7時に入園し、たっぷりとチューリップを鑑賞した。これで3年目になる Tulip Garden Museum は、オランダのキューケンホフ公園から伝授された庭園全体の芸術だ。

 7時の入園直後、わずかな時間だけ完全無風状態だった。7時10分頃には残念ながら、わずかなそよ風が吹き始め、水面が完璧な鏡になって写真に写る時間はわずか2−3枚撮ったところで終わった。それでも、年々変わるチューリップのレイアウト、色の配置、咲かせ方、これがあるから毎年来ることになる。花は生き物だから、何度見ても同じ状態はない。ここのこの芸術を見たことの無い方に、私は強くお奨めしたい。来週末も十分鑑賞可能です。一度見ておくべきです。

 もう一つ、一度は見ておいてほしいものとして、4月9日の欄にリンク先を貼った太田由希奈の映像。まだの方は、ぜひ、その中のYukina Ota 2002 all Japan championship F.S. at Kyoto 」だけは見てほしい。私が2002年12月に京都アクアリーナで初めてこの選手を見て衝撃を受けた演技です。解説者の「鳥肌が立った」というコメントに表れる、伝説の、またここ2年ぐらいのブランクがあって今や幻のような存在になっているビデオです。音楽は、くしくも荒川静香がトリノで使ったトゥーランドット。


2006.4.16(日) OLiNaS(オリナス)

 
いま私の住んでいる錦糸町は、東京の山手線の外側にはなるが、千葉県方面の総武線、埼玉・群馬県につながる地下鉄半蔵門線の交通の要所で、繁華街、ビジネス、郊外型ショッピング、下町の要素を併せ持つ、都会の中でも一風変わった街だ。そこに新たな街が作られる。

 45階建の高層マンション「ブリリア・タワー」、40階建オフィスビル「オリナス・タワー」、ショッピングモール「OLiNaS」。こんなものが錦糸町駅の北側に4月20日オープンする。「オリナス」という名前の由来は聞いていないが、私の想像では、墨田区に隣接する隅田川を歌った「春のうららの・・・」の3番の冒頭「にしきおりなす・・・」の部分からとったのではないかと思う。

 錦糸町は週末になると人と車であふれる街なのだが、これから一層賑やかな街になる。


2006.4.9(日) 太田由希奈、栄光の映像ライブラリィ

 
ここにも、太田由希奈さんのテレビ映像がありました。
  
http://www.youtube.com/results?search=Yukina+Ota&search_type=search_videos&search=Search
 

 特に、2002年の全日本選手権は伝説ものです。場所は京都アクアリーナ。そのときの音楽は「トゥーランドット」。当時のこの放送は深夜番組でした。入場料は2千円だったか? 予約も何もなしで、自由席でした。
 上記のサイトから、「Yukina Ota 2002 all Japan championship F.S. at Kyoto 」をぜひ一度ご覧ください。
 他にも、ジュニア世界選手権優勝、ジュニアグランプリファイナル優勝のエキシビションなど、由希奈さんの栄光の映像が見られます。



2006.4.9(日) テレビ映像

 
関西テレビで放送された映像がアップされているサイトを見つけました。太田由希奈の4月2日の貴重映像です。 http://s28.yousendit.com/d.aspx?id=288NP8RKIYACN33KGKLU4M8SNN

 11.52MBなので重いファイルになりますが、ダウンロードして見ることができます。こういう映像は、あまり長い間登載されないので、もし、太田由希奈とはどんなのかと興味のある方は、早めにご覧ください。
 「荒川を凌ぐ才能」という字幕、八木沼純子のコメント、サラ・ブライトマンの透明な歌声。帰って来た由希奈さんの優雅でしなやかな演技を、私は何度も見ました。


2006.4.8(土) 関西テレビ

 
ダイヤモンドアイスの放送は、関西テレビだけだった。きょう16時25分から1時間、私はもちろん見る術もないが、大阪の自宅できょうの放送を見た妻からの情報によると、由希奈さんは、ちゃんと出ていたとのこと。そのことが私にはうれしい。フジテレビ系列のこの局、関西でこのイベントを企画し放送をしたのは大ヒットだ。一方、東京でやらないのは何故なんだ。スケート連盟は、そんなに多額の放映権を求めているのか。

 先週のダイヤモンドアイスを見てから、私は、「エニィタイム・エニィウェア」と「アメージング・グレイス」を繰り返し聴いている。テレビを見られない分、音楽で思い出している。「エニィタイム・エニィウェア」は、サラ・ブライトマンが歌っている曲。「アルビノーニのアダージョ」というクラシック曲でもある。今回使われたのは、サラ・ブライトマンの歌そのもの。


2006.4.7(金) 久しぶりに

 
HPの更新をしばらくサボっていて、実に久しぶりに書くことになる。

 仕事が忙しかったが、そんな中、4月1日(土)2日(日)は大阪の家に帰っていた。

 4月1日土曜日の朝、飛行機のバースデー割引(誕生日の前後通算15日間が割引になる)を利用して、JALで羽田から神戸へ。なんで神戸かと言うと、新しい空港だから一度は見てみたいというだけのこと。窓からの景色を見ていると、伊丹行きと少し航路が違うのがわかる。明石を通り越してからUターンして明石海峡大橋の真上を通り、神戸空港へ着陸する。橋の真上を通るというところがダイナミックだ。橋の下から見上げて飛行機の写真を撮ったらどんなもんだろう、と想像する。
 神戸空港は埋め立ての海上空港だ。関空や中部国際空港と同じ。ただ、全然違うのが規模で、着陸しても周りにほとんど飛行機の姿がない、まさに地方空港だ。飛行機を降りる乗客と、これから乗る客が交わらない導線になっている。チェックインカウンターが、ロビーの中央部分にあるところが国際空港のような雰囲気でもある。空港からの交通機関はポートライナー。元々ループ状の単線だったポートライナーが、複線になって空港と三宮を結ぶ線になっている。列車は昔のまま、ポートピアのときにできた古い車両だ。

 久しぶりの神戸なので、三宮から電車に乗る前に、西村珈琲に入って、コーヒーを飲むことにした。そして、トースト。懐かしいコーヒーの味。トーストはバターかジャム。私はジャムトーストを注文した。レトロな店内は変わらぬ雰囲気を保っている。イチゴジャムをたっぷり乗せて三つに切って出てくるジャムトーストは、パン王国神戸ならではの逸品だ。前から一度聞いておこうと思っていたので、今回、男性の店員に聞いてみた。「ここのパンはどこのパン屋さんのですか?」。 男性店員は快く「内緒ですけど、イスズさんです」。なるほど納得した。神戸には美味しいパン屋が多いのだが、その中でも私はイスズベーカリーの食パンとガーリックフランスパンが好きで、三宮に勤務した3年間はよく買って帰ったものだ。
 震災直後の神戸勤務のことが懐かしい。わずかな時間の滞在だったが、とてもいい旅になった。

 JRの快速に乗って大阪方面へ向かう。新快速が出た後だったので快速に乗る。大阪の次の新大阪で降りて、普通列車に乗り換え、10分で千里丘に着く。そこから歩いて8分。神戸時代の帰宅の通勤経路なのだ。

 
 4月2日(日)今回の一番の目的であるフィギュアスケートのエキシビションを見に行く。妻と長男の3人で、車でなみはやドームへ。自宅から車で15分ぐらいの所にある。電車では遠回りになり、1時間以上かかるし、雨だから車に限る。但し駐車場には限りがあるとチケットにも書いてあった。午後3時開演だが、少し早めにと思い、1時半には出発した。ところが、甘く見たのが失敗で、結局駐車場は早くから満車で入れなかった。近くで2人を降ろし、私は別の駐車場を探した。その間も周辺は渋滞で、わき道も大変な状態だった。何とか渋滞を脱出し、ガソリンスタンドで聞いて、鶴見緑地の駐車場に停め、地下鉄に1駅乗って会場へ。私が着いたときは既に3時を回っていたが、開演は15分遅れとなり、なんとかうまく行った。

 照明、音楽、ナレーションの演出でいよいよ始まる。このイベントの正式名称は「KTVダイヤモンドアイス〜日本代表エキシビション」。KTVは関西テレビ。フジテレビ系列の放送局。日本代表とは、トリノオリンピック、世界選手権、世界ジュニア選手権、グランプリシリーズなどに日本代表として出た選手が勢ぞろいだからだ。但しここで、最近日本代表としての出場実績のない太田由希奈も出ていることが、私には特別な意義を持つ。私にとっては、2003年の12月に長野で見た全日本選手権が最後だ。その後、四大陸選手権で優勝し、2004年夏の強化合宿で右足首をケガしてから、苦悩の日々に入ってしまった選手。

 思えば京都で行われた2002年12月の全日本選手権。このときの由希奈さんの演技は、私ばかりではない、観ていた多くの人に衝撃を与えた。このときのその演技を観て太田由希奈のファンになった人々は多い。そのときの成績は4位。翌年の長野大会では5位。今の日本の高いレベルの中で、全日本4位、5位というのは相当なものなのだ。

 2年ぶりに観る由希奈さんの姿。オープニングで一人ずつ紹介されて出てくる場面。スポットライトを浴びて氷上を滑る姿に私は、幻ではないのかと、わが目を疑った。高鳴る鼓動も抑えられない。指先まで伸びた手、サーシャコーエンに負けない美しいスパイラル、そして今や世界一美しいレイバックスピン。わずか30秒ほどの出番だが、私をはじめ、この人を待っていたファンは固唾を呑んで見入っていた。最近のブームでフィギュアスケートのファンになった多くの観客には全く知らない選手だと思う。満員の観客の9割以上の人が由希奈さんの名前すら聞いたことがないだろう。

 エキシビションの演技は、一人ずつ紹介され、それぞれがとっておきのエキシビションのプログラムを演じる。男子も女子も、今シーズンの全ての試合が終わって、とてもリラックスした状況の中なので、思い切り良い演技になる。

 太田由希奈さんの音楽は、サラブライトマンが歌う名曲「Anytime, Anywhere」。編集無しで3分ぐらいの曲をそのまま使っている。エキシビションの曲としてはとてもよい曲だと私は思う。

 後半の2番目、由希奈さんのエキシビションの番になる。照明の色調がガラリと変わり、水色に。グランプリファイナルのシンボルカラーが水色だったので、いい感じだ。
 ケガのことを思うと、由希奈さんにはジャンプを飛んでほしくなかった。しかし彼女は前半に二度も3回転ジャンプを飛んだ。1回目のサルコウは両足着氷になったが、2回目の3回転トゥループは完璧に美しい着氷フォーム。そして次々と繰り広げる演技に、私は息をするのも忘れる状態で見入った。会場の一部の太田由希奈ファンが時々歓声を上げる。知らない人も、きっとこの演技に魅入り、ファンの歓声を聞いて、こんな選手がいたんだと驚きをもって認識したのではないだろうか。後半、曲が盛り上がるのに合わせてイナバウアーをすると近くの席から大きな歓声が起きた。荒川静香で有名になった技だが、元々は太田由紀奈のおはこだった。曲の高揚とともにスパイラルをすると、私はもう目頭が熱くなる。中野友加里の得意なドーナツスピンも、難なくハイレベルにこなす。レイバックスピンになると、曲もムードも最高潮になる。2年間見ないうちに19歳。ずいぶん大人になった気もする。京都醍醐クラブで鍛えられた美しいスケーティング、アメリカのコロラドスプリングスでリハビリをしながらさらに磨きをかけている表現力。こうして眼の前で見せてもらえたことが最高の幸せだ。演技が終わると、方々から声がかかる。「お帰り!」という声も。私には娘がいないが、自分の娘のような幻想を描く。

 もう一人、いい演技だったのが中野友加里。今季最高のエキシビションだったと思う。曲はアメージンググレイス(Amazing Grace)。これがいい。NHK杯優勝のときにテレビで見た、この同じ会場でのエキシビションが印象にあるが、私はグランプリファイナルのエキシビでも見た。その後いろんな大会のをテレビで見たが、この日の演技が最も良かった。トリノに行けなかった中野だが、私はけっして美しい方ではないこの選手の頑張りに惹かれる。

 荒川静香、村主章枝の演技も、当然良かった。金メダルの荒川には満場の注目が集まる。イナバウアーをより長く深くそらせて、喝采を浴びていた。浅田真央のときは、会場内から小さい子の「まおちゃーん!」という声が飛び交った。

 安藤美姫が欠場と発表されたのは、当日の会場入口の掲示だった。4回転に期待して来た観客も多かったに違いない。私はどちらかというと、あまり興味がないが、しかし不可解なのが欠場理由だ。「中京大学の入学式とその関連行事」のためだという。これだけ大がかりなイベントに対して、大学の入学式が大事かもしれないが、そんなことは前からわかっていることではないのか。2003年、2004年と全日本選手権2連覇をしながら、肝心のオリンピックシーズンに入って調子が下降線をたどり、トリノでは惨敗となり、荒川や村主に主役を奪われた彼女は、この場に出てくるのも辛いというのが本当の理由だろうと推察する。

 家族で見に行ったハイレベルなフィギュアスケートは初めて。昨年妻と西日本ジュニア選手権を見たが、こうしてテレビにも出る選手をふんだんにナマで見られたのが良かったと印象を語り合い、余韻を残したまま帰宅した。そして私は直ぐに東京へと戻った。